突き出される根を飛び越え、振り下ろされる根を弾き、横に薙ぐ根をくぐり抜けて山頂へ跳ぶ。
いける。 前は逃げるのが精一杯だったけど、今は根を捌きつつ前進できている。
サチがレーダーで根の動きを捉え、その意図を読み、最適なルートへ方向を定める。
そして、私が迫る根を寸前で回避し、姿勢を保つ。
数千本の根を手足とするために、あの女が脳を強制的に高速化させているのをCPUの
オーバークロックに例えるなら、私達は二つの処理を並行して行うデュアルCPUマシンだ。
性能は、今のところ互角。
でも、放射状に広がる根の中心に近づくにつれ、根の存在密度は急速に増していく。
『警部さん、そろそろ限界!』
「分かったわ、過電流放電用アンテナを起動して!」
自身を電磁波から守るため、尻尾が直立する。
「これでも、食らいなさいっ!」
バックパックから電磁波爆弾が上空へ射出される。 そして、一帯に響き渡る炸裂音。
「ぐ、がぁぁぁぁ!!」
と同時に、山頂から人とは思えない悲鳴が響いた。 全ての根が力を失い、無残にしおれていく。
タイムリミットは十秒。
「間に合うか…」
『間に合って!』
山頂の銀樹本体が目視できる距離まで迫る。
「…お、まえ…何をした!?」
女が悪魔のような視線を向ける。
機器のショートがもたらす激痛に顔を歪ませながらも、その戦意は少しも衰えていない。