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深夜零時。緊張と言う名の静寂に包まれた博物館に、警報が響き渡った。
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「来たわね、“怪盗ガジェット”。私の読み通りだわ」 私と同じくらいの歳の、トレンチコートに身を包み警官隊を従える少女。 アズマ・ハツミ警部。私の逮捕の執念に燃えて、行く先々で立ち塞がる子だ。 「今よ、捕獲網、投下!」 頭上から巨大な投網が私の身体に覆い被さる。 「くっ、こんな網」 簡単に引き千切れる、筈なのに… 「無駄よ。いくらあんたの腕力が人並み外れでも、特殊強化鋼線で編まれた網を破る事は不可能だわ」 警官たちの懐中電灯が一斉に私を照らす。 夜闇というヴェールを剥がされ、私の漆黒のボディが浮かび上がった。 illustration 少女の輪郭をした機械。あの女に改造された、忌まわしい私の身体。 「年貢の納め時ね。さあ、神妙にお縄につきなさい!」 じわりと、警官たちが迫ってくる。 (捕まる…捕まったら、殺される…) 「いやっ、こないでーーっ!!」 それは、無意識の行動だったと思う。 網を握る両手が青白い火花を散らした。直に当てれば巨象も倒すスタンガン。 「なっ! まだ…こんな…装備が…」 阿鼻叫喚。電撃は鋼線の網を伝い、警官隊をことごとく気絶させた。 「ごめんなさい…でも私、死にたくないから」 「獲物」を抱え、網から這い出す。そのとき、背後からしわがれた声が私を呼び止めた。
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| 「ま、待ってくれ!」 振り返ると、白髪の老人が追ってくるのが見えた。この博物館の館長、今回の被害者だ。 「君の目的は何だ!? 金ならいくらでも払う、だからその石板は持っていかないでくれ!」 この「獲物」…古ぼけた石板を盗る目的? そんなの、私が知るわけない。 あの女に訊いても教えてくれる筈が無い。 私はあの女にとってピッキングツールと同じ、盗むための道具に過ぎないのだから。 「頼む、持って行かないでくれ! それは人類史を解き明かすための貴重な…」 老人が、すがるように手を差し出す。 「近寄らないで!」 「ひっ…」 哀れな老人が、私を地獄へ引きずり込もうとする亡者に見えた。 盗みに失敗すれば、私はあの女に殺される。だから私は悪くない。 なのに、ズキリと、無いはずの心臓が痛んだ。 |