6.

 

「起きなさい、仕事よ」
 あの女の声が、安らかな眠りの終わりを告げた。
 また、死の恐怖と罪の意識に苦しむ現実が始まる。
 私はゆっくりと目を開いた。
「あれ…?」
 なにか、いつもと違う感じがした。
 両腕が重たく感じる。視点がいつもより高い気がする。 
「どう? 気に入ってもらえたかしら、その手足は」
「手足………なっ、何これ!?」
 少女の形をした私のボディから、不釣合いなほど大きい手足が生えていた。
 太く、長く、ゴツゴツした四肢を持つ私は、まるで悪鬼にでも化けてしまったようだった。
「見ての通り、隠密性と機動性を犠牲にして、破壊力を増大させてあるわ」
「そんな、どうして私をこんな姿に…!?」
 私は思わず目を閉じた。ますます人間からかけ離れてしまった自分の身体を見ないように。
「あの警察の雌犬に対抗するためよ。前回とどめを刺していれば、こんな面倒は無かったというのに」
「えっ、あの子は生きてるの!?」
 喜びを隠し切れない私に、女はあの邪な笑顔を向けた。
「…嬉しそうね」
「あっ…それは、その…」
「やはり、さらなる調教が必要ね。躾の基本は“飴と鞭”…
自爆装置という鞭に加えて、とびっきりの飴をプレゼントしてあげるわ」

 

 

 

 カチリと、首筋の端子にプラグが差し込まれる。
「なっ、何を…」
 言い終える前に、私の身体に何か衝撃のようなものが走った。
「!!!………っ…あっ!」
 頭の中が真っ白になる。身体に力が入らない。
 ぐらりと、床に倒れこんだ。
「っ……はぁ……ああ…ぁ」
 つま先から頭頂部まで、私を貫いた衝撃は熱い余韻を残し、
それはやがて、どこかで感じた事のある喜びに変わった。
「ふふ、随分とお気に召したようね。昔のお前も、そのような姿で行為に励んでいたのかな?」
「え…?」
 二回りも大きくされた私の手は、無意識のうちに、胸と下腹部を撫で回していた。
「そ……そんな…」
 今はただ固い金属の殻があるだけの部位に、あの恥ずかしい器官がよみがえったような錯覚。
「その首筋の端子は、お前の脳に繋がっている。性感を直接脳に入力するなんて簡単なことよ」
 女が愉快そうに私を見下ろしている。
「……性感……これが…?」
 信じられない。
 昔、皮膜を剥いて肉珠に直接触れてみたときも、
 中への入り口におそるおそる指を差し入れてみたときも、こんなに感じる事など無かった。
 だから、こんな激しすぎる衝撃が、性感だなんて…
「ふうん、なら、もっと味わって確かめてみなさい。何度でも、ね」
「……っ!?」

 

 

 

「ぁああぁぁぁ!!」
 衝撃が、何度も何度も、私の身体を蹂躙する。
 もう言葉も浮かばない。悲鳴とも歓喜ともつかない叫び声が、途切れることなくあふれ出る。
 生身の身体なら、悶えるあまり呼吸も出来ずに窒息していたに違いない。
「イイでしょう? なにもかも忘れて、いくらでも感じられるなんて、サイボーグの特権よ」
「あ…ぁ……」
「このまま続けて欲しい?」
 女が笑顔のまま私を焦らす。
「う…う…」
 信じられない事に、私は、首を縦に振っていた。
「正直ね。いいわ、心ゆくまで味わいなさい」
 再度、私の身体が痙攣する。
 息も切れず、のたうつ身体は疲れを知らない。
 歯止めの利かない私は、ただひたすらに快楽をむさぼり続けた。


「ここまでよ」
 不意に快感が途切れた。
「えっ…」
「まだ欲しいというの? こんなに楽しんだのに、まだ足りないの?」
「も、もっと…もっと…!」
「そうね。なら一つ条件があるわ。簡単なことよ」
「…?」
「今まで通り、今回も石板を持ち帰る事。たとえ警官を殺すことになっても、ね」