11.

 

 結論から言うと、サチの要望するような機能は、既に私に備わっていた。
 これは一体全体どういう事なのか。 事件が解決した後に、お白州の上で事情聴取の上、
追って沙汰を申し渡すとカズヒロ技術官に告げておいた。
 で、私は今、トイレの個室に籠もり、便座の上に腰掛けている。
 時刻は深夜、邪魔が入る心配はない。
 
 下腹部のハッチを開ける。
「うわ…」
『あ…』
 そこには、実に精巧に再現された“それ”があった。
「……」
『……』
 でも、いざ始めるとなると、さすがに二の足を踏む。
 
 この身体は、各種のレーダーや感覚器からの情報は、私たち二つの脳に等しく入力される仕組みになっている。
 つまりサチを満足させるという事は、私も同時に快楽に身をゆだねるという事だ。
 それも、私のあられもないポーズや指づかいを、サチに対して赤裸々に大公開するというおまけ付きで。
『……』
 やっぱり落ち着かない。 始まるのを待ちかねているサチの気配が、ひしひしと伝わってくる。
『しょうがないか… サチ、この身体しばらく貸すから、あなたの好きなようにしてくれない?』
『えっ?』
『どっちの脳が身体を動かすかは切り替えられるのよ。 しばらくの間、あなたが動かせるようにしてあげる』
『い…いいの?』
 自分のひとりエッチする様子を、サチに見られるよりずっとマシ…だと思う。

 

 

 
 

 カチンと、体内に小さな音が響く。 神経回路が切り替わった音だ。
 たった今、この身体を動かす権限はサチに移った。
 
『って、サチ、ちょっと待って!』
 気が付けば、指が飢えたように最も敏感な点を目指し…
『ああぁあっ!!』
「んんっ!」
 ためらう事無く、肉の芽を押し潰していた。
 そして、間髪をいれずもう片方の手が合わせ目を開く。
『んあっ!…だめっ…もっと、ゆっくり…あっ!』
「ごめん…我慢、できなく…っ!」
 唇の内側が激しく撹拌される。
『だめっ、それは、……あんっ!…早すぎっ…』
「だって…だって…!」
 刺激から陰核を守っていたものが剥かれる。
 無防備になった神経の固まりを求めるように指が伸びて…
『「んああぁぁっ!!」』
 意識が、飛びかけた。
 
 私と同時に快楽を味わうサチ。 そして自分の意思に反してサチに快楽を強制される私。
 私は、サチに、犯されていた。
「んぁぁっ、も、もっと、もっとぉっ…!」
『だ、だめぇっ…! ちょ、っと、ストップ、して…っ!』

 

 

 

『えっ…ちょっと、それは…』
 折り畳まれたのは親指と小指。 そして平行に伸びた人差し指、中指、薬指。
 指が三本、私の入り口に狙いを定めている。
『だめぇっ…だめえっ! それ多すぎ…ひっ!』
「だめ、足りないの…まだ…もっと!」
『あっ!!?』
 下腹部に、巨大な杭が打ち込まれた。
「くうっ……ま、だ…もっと」
 サチの声に導かれるように、奥へ、深みへと侵入する指。
『ひぁ…ぁ…』
 引き裂かれるような感覚に、私の身体は痺れ、脳は言葉を失った。
「…ちがう…の…もっと、もっと!」
 サチが手首をひねる。
 縦筋に平行に差し込まれた指の列がねじれて、膣をあり得ない形に押し広げ…
『…!!!』
「んっぁああああ!!」
 私の意識は、そこまでが限界だった。
 
 その後は、サチのあえぎ声と、お腹の中をかき回す指の質量が、かすかに記憶に残っているだけだった。

 

 

 

『………』
『………』
 事が終わった後、私達はただなんとなくトイレの一室に留まっていた。
 自分のあられもない声を聞かれてしまった恥ずかしさと、サチの淫らな一面を知ってしまった気まずさで、
なんだか声をかけづらい。
 でも、きっとお互い様だ。 二人とも等しい量の快感を受け取った筈なのに、私だけ先にイッちゃうなんて…
きっと、イキやすい人だったんだって思われているに違いない。
 
『あ、あの…』
『え…と、サチ?』
『ご、ごめんなさい! 私…もっとゆっくりするつもりだったんですけど…でも、止まらなくて…』
『別に、その…私が敏感すぎただけかもしれないし』
『そんな事無いです! その…変なのは私の方ですから!』
『変って…そんな大げさな』
『いいんです、変なんです、私……警部さんの迷惑も考えないで』
『いいのよ、私の事は気にしなくて』
『でも私、警部さんをいじめてたようなものだし…』
(確かに、これはちょっとした拷問だったけど)
『いいって言ってるでしょ。 サチのお願いなら、また…一緒にしてあげるから』
 義理でも気遣いでもなく、そう答えてしまった。
『えっ…?』
『もう一度くらいなら、いいかな…って』
 
 本当に変なのは、私の方だと思う…