カドイデ教授の容疑固めが遅々として進まない中、一ヶ月が過ぎようとしていた。
サチが首尾よく実験体の娘を救出できたからといって、悠長にしている暇はない。
時間がたてば、教授等は新たな娘を実験体として拉致するだろう。
「要するに、改造技術を持つあの女さえ救出してしまえばいいんですよね」
「サチは簡単に言うけど…あの広い病院内のどこに囚われているか、全く分からないのよ。
ハッキングで入手したデータからもね。 連中、よほど用心深いみたいで…」
「だったら、こうすればいいんです」
サチが一通の封筒を手渡す。 中には便箋が一枚。
「“午前零時、貴殿秘蔵の技師を頂戴します。 Gadget”…!? これは、予告状じゃない!」
「そうです、予告状です。 これを受け取った教授は、あの女の警備を一層固めますよね」
「つまり…その警備網の中心に、」
「はい、あの女がいるってワケです」
「で、でも、ガジェットだった少女が今は警察官になっているのは、衆知の事実よ。 違法捜査って事が世間に…」
「大丈夫です。 世間的には、たまたまイタズラの予告が届いて、たまたまその日にあの女が自力で
脱出した事になりますから」
笑顔でさらりと言ってのけるサチ。
「…サチ、意外と大胆なのね」
「何言ってるんですか、慎重なだけじゃ十一回も警部さんを出し抜けませんよ」
「…ホントに、もう二度とサチを敵には回したくないわね」
改造される前のサチの記憶は消えてしまっているけど、どんな娘だったのか、なんとなく想像できる気がする。
あの女が白羽の矢を立てたのも、この備わった素質のせいなんじゃないだろうか。