「…警部、一体故障の原因は何なんですか? ひょっとして、この歪み方は、」
「ええ、弾痕よ」
「…やっぱり。 誰なんです、警部を撃ったのは?」
私のことを気遣いながらも、彼の手は休まず動いている。 職人芸だ、と思った。
「昨夜あなたが徹夜で作業しているとき、署の敷地内に侵入しようとしてきた不審な男数名よ」
「警察署に侵入? 一体何のつもりですかね………はい、修理終わりましたよ」
「ありがとう」
手首がとてもスムーズに動く。 撃たれる前より動き易いくらいだ。 きっと、気付かないような
小さな劣化が積み重なっていたんだろう。
「…で、カズヒロ技術官、侵入者達の目的に心当たりは?」
「え? ありませんけど…」
彼はきょとんとした顔で答えた。
「あなたよ、カズヒロ技術官、狙われているのは」
「えっ…?」
「いい? 今回の事件は、ある暴力団がサイボーグ技術を求めて、あなたのお姉さんを誘拐し、
その記憶の復元と洗脳、及び改造施設の提供をカドイデ教授に依頼したって事なのよ」
「は、はい」
「あなたのお姉さんが行方不明の今、暴力団がサイボーグ技術を諦めなかったとすれば、次に狙われるのは?」
「あ…」
彼の顔から血の気が引いていく。 やっと自身が渦中の人だと気付いたらしい。
「えっ、えっ、と、それじゃ僕はどうすれば」
「予定通りに行動すればいいわ。 あなたは自分の仕事、ユカリさんを助ける作業に集中して」
「ええ、でも…」
「サチが言ってたわ、逮捕状も時間の問題だって。 それまでは、私があなたを守るから」