12.
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ガラスを二枚隔てた向こうに、白く霞み始めた春の空が見える。
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その日の営業時間が終わるまで、ハツミさんとサチさんは待っていてくれた。 大急ぎで身体中の魚臭い水を洗い流して、ドライヤーで乾かす。 金属の肌の上にコートを羽織って、 エントランスホールに駆けつけた。 「ユカリさん、お久しぶり。 元気にやってるみたいね」 ハツミさんが笑顔でベンチから立ち上がる。 「お久しぶりです。 今日は警察のお仕事はお休みですか?」 「あなたの様子を見に来て、いろいろお話をするのが今日の仕事よ」 「どう? 仕事仲間の人たちとうまく付き合えてる?」 脇からサチさんが、なつっこく身体を寄せてきた。 「は、はい、最初の頃に比べれば…私の事を、普通の人間として接してくれるようになりました」 「よかったじゃない。 私がこの身体になってから学校生活に戻ったときは、それはもう大変で…」 そう言いながら、サチさんの顔は笑っている。 肉体的に成長する事のなくなった私たちは、三人とも同じくらいの歳の少女に見えるけれど、 ハツミさんとサチさんは私より何歳も年上だ。 やっぱり先輩は精神的にもタフだなあと思った。 「ところで、あなた自身が気付いてるはずだし、私が言うべき事ではないかもしれないけど…」 ハツミさんが遠慮がちに口を開く。 「分かってます。 お客さんは、お魚より私を見ているんだって」 世にも珍しい金属の身体の少女が、潜水具無しで水の中に潜っていれば、最高の見世物になるに決まっている。 ガラスの水槽の中、ショーケースに閉じ込められてしまったような恐怖を感じた事も、一度や二度じゃない。 「でも…それでも、私は水の中で仕事がしたいんです。 そして、また自由に泳げるようになりたいんです」 「泳げるように?」 「はい。 実はその事で、相談があるんです」
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「今、私を主役にした新しい水中ショーの企画が持ち上がっているんです。 それで、もし私がその主役を
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